吉祥寺.pm9が終わりました

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前回から少し間が空いてしまいましたが(予定では10月開催のハズでした)、無事に開催できました。

rejectcon会場での与太話から始まった吉祥寺.pmですが、所謂カンファレンス形式の吉祥寺.pmが9回、特定テーマ&全員参加型のKichijojipm-miniが11回と、2年間で20回のイベントをやってきました。凄いですね、継続は力。

今回もトーク4本、LT6本の枠を用意して、「詰め込みすぎか?」「そもそも集まるのか?」とドキドキしましたが、無事に全ての枠が埋まりました。

今回はぜひトークを聞いてみたい人として、以前から気になっていたひさいちさんにトークをお願いしたところ、快諾頂き、最近話題になっていた「エンジニアとしての立ち居振る舞い」というテーマで喋って頂きました。

hisaichi5518.hatenablog.jp

初参加のt.amanoさんによる会社のウェブサイトリニューアルまでの試行錯誤を、さまざまなネタと共にLTで喋って頂きました。

次回は少し趣向を変えて、「Perl入学式参加者、その後」をテーマにやってみたいと思っています。お楽しみに!

キチスカ002が終わりました

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もっともヘビーな第3章を読み始めました。おそらくまだまだ続くと思います。

次回は少し趣向を変えて、普通のScalaの入門をやります。

Scalaスケーラブルプログラミング第3版

Scalaスケーラブルプログラミング第3版

「オブジェクト指向設計実践ガイド」を読んだ

だんだん読書ブログ化してきましたが、「オブジェクト指向設計実践ガイド」という本を読みました。

rubyをベースに、良いオブジェクト指向設計を実践するための考え方を紹介する、という本です。

全体として最も特徴的なのは、最初から正解となるコードを紹介するのではなく、セカンドベストというか、決して最適では無いけど、現状それを判断する材料も無ければこのぐらいで止めておくのも選択肢の一つです、という感じで、コードの成長の余地を残した説明が多い点です。

最初から完璧な、理想的な設計だけでコードを書かれても、「そうゆうものか?」と思ってしまい、今ひとつ納得感が得られないものですが、このやり方だとかなり納得感を引き出すことに成功していると思います。

あと、やはり最初から完璧な設計はできないので、試行錯誤しながら、少しずつ良くしていく、という所も良いところですね。

依存関係が少なく、適切に抽象化された設計を実践するために、非常に参考になる本です。

吉祥寺.pm9を開催します

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前回から少し時間が空いてしまいましたが、吉祥寺.pm9を開催します。

ついに2周年ということで、皆様の参加をお待ちしております!

今回テーマを「Perl!」と書いてみましたが、まぁ精神的というか、象徴としてのPerlというか、そんな解釈で自由に参加してみて下さい。3周年に向けた第一歩です!

キチスカ #002を開催します!

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少し間が空いてしまいましたが、第二回を開催します。

今回も、「Scala関数型デザイン&プログラミング ―Scalazコントリビューターによる関数型徹底ガイド」の読書会という形式でやりますが、LTや環境構築とか、基本的な文法の話とか、気軽に聞いてみて下さい。

あらかじめ、こんなことが聞きたい・話したいことが有る、という人はイベントページのコメント欄に書いておいて頂けると準備します!

「Scala関数型デザイン&プログラミング」を読み進める - 第1章、第2章 -

「Scala関数型デザイン&プログラミング」のexerciseを解き進めるための環境準備をだいぶ書き換えて、読み進める上での準備作業を全部網羅してみたので、改めて「Scala関数型デザイン&プログラミング」を最初から読み進めるためのガイドっぽいことを書いてみます。

今回は第1章と、第2章までです。

第1章 関数型プログラミングとは

第1章はおもに「副作用の排除」について書かれています。

冒頭のコードが実際に実行できない(外部のAPIに依存している、という設定)なのと、コード事例自体があまり副作用の排除によるメリットが見えづらい(テスタビリティが上がったことを実感しづらい)コードになっているので、理解しづらいところがあります。

本当は、「コーヒーの代金を課金する」という本質的な機能はそのままで、その後の色々な機能拡張(まとめて払うとか)のときに重複が上手く排除できたことを示せると良いのでしょう。しかし、そこまでやると紙面も使いすぎてしまうので、かなり急ぎ足の解説になっています。なので、まずはざっと読んで、先に進める方が良さそうです。

実際に、外部のAPIや、再現性の低い機能(時刻とか、乱数だとか)などを対象にテストで苦労したり、随時に行った機能追加でまったく重複したコードを書いた経験が無いと、メリットが理解しづらいかもしれません。

第2章 Scala関数型プログラミングの準備

以降、本を読んだだけでは分からなさそうな箇所をポイントを絞って解説していきます。

2.1 速習:Scala言語

Scalaという言語の解説が始まります。わりとコンパクトに、分かりやすくまとまっていますが、objectキーワードで作られるシングルトンの解説がポイントです。

Javaではデザインパターンの一つとして使われているシングルトンがScalaでは言語仕様として用意されています。機能としては書かれていますが、あまり存在理由というか、そのメリットについては書かれていないので、デザインパターンなどの解説を(実装方法は別として)読んだ方が理解し易いでしょう。

2.2 プログラムの実行

scalacscalaコマンドを使ってコードを実行する方法が説明されています。sbtからの実行方法については、下記の記事を参考にしてみてください。

「Scala関数型デザイン&プログラミング」のexerciseを解き進めるための環境準備

2.4 高階関数:関数に関数を渡す

高階関数という用語が難解なイメージを抱かせますが、Java8ではラムダ式LL系言語やJavaでも無名関数と、実際には割とよく使われている概念です。

自分がいままで使ってきた言語でどう実現されているか、振り返ってみると分かりやすいでしょう。

再帰も同様に、まずは自分が使ったことのある言語で試してみると良いでしょう。

exercise 2.1

アルゴリズム系では定番の、フィボナッチ数列を求める関数の作成です。

関数のひな形は、以下のファイルに書かれています。

exercises/src/main/scala/fpinscala/gettingstarted/GettingStarted.scala

初期状態では下記の通りのコードになっています。

object MyModule {
...
  def fib(n: Int): Int = ???
...
}

見慣れない???は正しいScalaの構文で、コードが未定義であることを示すメソッドです。実行するとNotImplementedErrorの例外が送出され、実行時エラーになります。

まずはこの???を削除して、解答となるコードを書いていきます。回答はanswerの同名のファイルに書かれています。

ここでもフィボナッチ数列と、Scalaにおける再帰を一度に理解しようとすると混乱してしまうので、まずは既に理解している言語で再帰を使って記述してみることをお勧めします。

コードを書いたら、以下の手順で実行します。サンプルコードではMyModuleというobject内に定義するようになっているので、fpinscala.gettingstartedパッケージをインポートして、MyModule.fibという形式で関数を呼び出します。

$ ./sbt
> project exercises
> console
scala> import fpinscala.gettingstarted._
scala> MyModule.fib(10)
res1: Int = 55
scala> MyModule.fib(0)
res2: Int = 0

2.6 型に従う実装

カリー化や、関数合成と言った重要なキーワードが出てきますが、この段階ではexerciseをどんどん解いていって、先に進める方が良さそうです。

ただし、これらのキーワードはのちのち重要になってきますが、凄くさらっと説明されているので、先に進む上ではこの本以外のソースから定義や使い方を調べておいた方が良いでしょう。

おわりに

あくまで自分が初めて読んだときにつまづいた所を中心に書いていったので、当然別のバックグランドの人は別のところでつまづくと思います。

次回は第3章からスタートです。

Scalaではありませんが、Haskellベースの関数型プログラミングの入門本が増補改訂されたので、ぜひ読んでみたいところです。

「Scala関数型デザイン&プログラミング」を読んで、コードを書いて、実行する - 第3章 -

引き続き、「Scala関数型デザイン&プログラミング」を読み進めて、第3章に突入します。

Listクラスのオブジェクトを作る

第3章はListクラスの実装から始まります。実装したListクラスの内容は詳細に解説されていますが、割とサクっと進むので、実際には実行結果を丁寧に確認していった方が理解が深まります。

まずは、例として紹介されているコード例を確認します。

$ ./sbt
> project exercises
> console
scala> import fpinscala.datastructures._
scala> val ex1: List[Double] = Nil
ex1: fpinscala.datastructures.List[Double] = Nil

scala> val ex2: List[Int] = Cons(1, Nil)
ex2: fpinscala.datastructures.List[Int] = Cons(1,Nil)

scala> val ex3: List[String] = Cons("a", Cons("b", Nil))
ex3: fpinscala.datastructures.List[String] = Cons(a,Cons(b,Nil))

applyメソッドを使ったパターンが載っていないので、以下のように試してみましょう。

scala> val ex4: List[Int] = List[Int](1, 2, 3)
ex4: fpinscala.datastructures.List[Int] = Cons(1,Cons(2,Cons(3,Nil)))

scala> val ex6: List[Double] = List(1, 2, 3)
ex6: fpinscala.datastructures.List[Double] = Cons(1.0,Cons(2.0,Cons(3.0,Nil)))

scala> val ex7 = List[Double](1, 2, 3)
ex7: fpinscala.datastructures.List[Double] = Cons(1.0,Cons(2.0,Cons(3.0,Nil)))

scala> val ex8 = List(1.0, 2, 3)
ex8: fpinscala.datastructures.List[Double] = Cons(1.0,Cons(2.0,Cons(3.0,Nil)))

scalaが型を推論してくれるので、ex7や、ex8のような書き方でもきちんとList[Double]型になっていることが分かるかと思います(ex8ではパラメータが1.0になっていることに注意!)。

まずは、こうやって色々な組み合わせでREPLからListのオブジェクトを作ってみると、オブジェクトの仕組みやリテラルで書いたデータの型がどうのように推論されるのか、分かると思います。

Nothing型

第3章で一番難しいのが「共変」とNothing型の概念です。

空のリストを作ると、NilだけのListが生成され、List全体がNothing型になります。

scala> val e = List()
e: fpinscala.datastructures.List[Nothing] = Nil

そのリストをConsで引数に渡すと、リスト全体の型は有効な値に合わせて推論されます。

scala> val list = Cons(1, e)
list: fpinscala.datastructures.Cons[Int] = Cons(1,Nil)

これは、Nothing型がすべての型のタイプになっていることで実現されていますが、すぐに理解するのは難しいところです。

下記の記事が理解の参考になるでしょう。

kmizu.hatenablog.com

Listクラスのメソッドの実行

最初からsumメソッド(リストの要素の足し算)と、productメソッド(リストの要素のかけ算)が用意されてますが、これも実行してみましょう。

scala> val r0 = List.sum(List())
r0: Int = 0

scala> val r1 = List.sum(List(1, 2, 3))
r1: Int = 6

scala> val r2 = List.product(List())
r2: Double = 1.0

scala> val r3 = List.product(List(1, 2, 3))
r3: Double = 6.0

よく考えると空のリストの積が1.0になるのは正しいのか?という気もしますが、足し算とかけ算が実行されてることが分かります。

コンパニオンオブジェクトの理解

「object型で定義されるものはシングルトンで、同名のクラスが定義されているobjectはコンパニオンオブジェクトで…」という所も、いきなり色々な概念が登場して、Scalaの分かりづらいと感じるところです。

Scalaのコンパニオンオブジェクト」のコラムと、実際のコードを上から順に追いかけるのが理解の近道です。

パターンマッチの理解

パターンマッチもまたScalaの中でも特に強力な機能の一つです。「Scala関数型デザイン&プログラミング」の中では割とさらっと解説されているだけなので、「Scala スケーラブルプログラミング」の第15章「ケースクラスとパターンマッチ」をよく読んで理解することをお勧めします。

Scalaスケーラブルプログラミング第3版

Scalaスケーラブルプログラミング第3版

exerciseを解く

tail

最初の要素を削除するので、実行結果は下記の通りになります。

scala> val list0 = List(1,2,3)
list0: fpinscala.datastructures.List[Int] = Cons(1,Cons(2,Cons(3,Nil)))

scala> val list1 = List.tail(list0)
list1: fpinscala.datastructures.List[Int] = Cons(2,Cons(3,Nil))

ListがNilの場合について特別に言及されていますが、以下のようなオブジェクトに対してtailを実行することを想定すると、いくつかの設計上の選択肢が有り得ることを示唆しています。

scala> val e = List()
e: fpinscala.datastructures.List[Nothing] = Nil

確かに、「先頭を削除する」ということをよく考えて実装を決めた方が良さそうです。

setHead

scala> val list0 = List(1,2,3)
list0: fpinscala.datastructures.List[Int] = Cons(1,Cons(2,Cons(3,Nil)))

scala> val list2 = List.setHead(list0, 4)
list2: fpinscala.datastructures.List[Int] = Cons(4,Cons(2,Cons(3,Nil)))

回答事例のコードでは、Nilを指定すると、Nilが2回格納された不正なリストができあがります(型もAnyになってしまい、sumメソッドが実行できない)。そこまでは考慮されていないようです。

scala> val list3 = List.setHead(list0, Nil)
list3: fpinscala.datastructures.List[Any] = Cons(Nil,Cons(2,Cons(3,Nil)))

テストコードを書いて、結果を確認する

ここまでsbtのコンソール(REPL)を使って実行結果を確認してきましたが、やはり実行結果はテストコードを書いて、テストで確認した方が、何度でも試すことができるのでお勧めです。exerciseで書いたコードをテストコードで確認する方法を紹介します。

Scalaのテスティングフレームワークとしては、ScalaTestか、Specs2がよく使われていますが、ここではScalaTestを使うことにします。

ScalaTest

依存ライブラリの追加

Build.scalaのoptsに、ScalaTestへの依存を追加します。

resolversの最後にカンマを追加するのを忘れないように。

val opts = Project.defaultSettings ++ Seq(
  scalaVersion := "2.11.7",
  resolvers += "Typesafe Repository" at "http://repo.typesafe.com/typesafe/releases/",
  libraryDependencies += "org.scalatest" %% "scalatest" % "3.0.0" % "test"
)

テストコードの追加

exercises/src/test/scala/fpinscala/datastructures/ListTest.scalaというテストコードのファイルを用意します。パスの3番目がtestになっていることに注意して下さい。Javaではおなじみですが、テストコードはtestディレクトリに保存します。

tailメソッドのテストコードは以下のように書けます。

ScalaTestではいくつかのテストスタイルが使えますが、ここでは一番シンプルに書けるFunSuiteを使っています。

最後のshould equalで期待する値との比較をしています。

import org.scalatest._

import fpinscala.datastructures._

class ListSuite extends FunSuite with Matchers {
  test("tailメソッドは先頭の要素を削除する") {
    val listInt = List(1, 2, 3)
    val listDouble = List(1.0, 2.0, 3.0)
    val listString = List("one", "two", "three")

    List.tail(listInt) should equal (List(2, 3))
    List.tail(listDouble) should equal (List(2.0, 3.0))
    List.tail(listString) should equal (List("two", "three"))
  }
}

テストはsbtから実行します。

$ ./sbt
> test
...
[info] ListSuite:
[info] - tailメソッドは先頭の要素を削除する
...
[success]...

最後に[success]が出力されればテスト全体が成功したことになります。テストが一つでも失敗すると[error]が表示されます。

setHeadメソッドのテストを追加してみます。

import org.scalatest._

import fpinscala.datastructures._

class ListSuite extends FunSuite with Matchers {
  val listInt = List(1, 2, 3)
  val listDouble = List(1.0, 2.0, 3.0)
  val listString = List("one", "two", "three")

  test("tailメソッドは先頭の要素を削除する") {
    List.tail(listInt) should equal (List(2, 3))
    List.tail(listDouble) should equal (List(2.0, 3.0))
    List.tail(listString) should equal (List("two", "three"))
  }

  test("setHeadメソッドは先頭の要素を置き換える") {
    List.setHead(listInt, 4) should equal (List(4, 2, 3))
    List.setHead(listDouble, 4) should equal (List(4.0, 2.0, 3.0))
    List.setHead(listString, "four") should equal (List("four", "two", "three"))
  }
}

この後出てくるdropメソッド以降も同様にテストを書きながら進めていくと良いでしょう。

exerciseのコードの中身については次回以降に見ていきます。